予防歯科preventative-dentistry
予防歯科について
予防歯科・Cariologyという言葉がテレビから流れてくるようになりました。20年前にはほとんどなじみのなかった言葉です。時代は変わってきました。
2005年に開業して以来ずっと、当院ではメンテナンスの重要性を訴えて参りました。果たして歯科のメンテナンスは私共の地域に定着したのでしょうか?
3歳児むし歯有病率の低い県、高い県 単位(%)
順位 | ベスト | ワースト |
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1位 | 愛知11.8% | 青森28.8% |
2位 | 東京12.6% | 沖縄28.2% |
3位 | 静岡12.7% | 佐賀27.3% |
この表に示すように青森県はまだまだ道半ばであることがわかります。
歯は活性のない臓器です。治療は完全に削る前の状態に戻すことは出来ず、だた、形を治しただけ、決して「治った」ということではないのです。
修復物 | 再度のむし歯 | 脱落 | 神経の炎症 | 平均使用年数 |
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レジン充填 | 5.1年 | 3.3年 | 5.6年 | 5.2年 |
インレー | 5.8年 | 4.1年 | 5.3年 | 5.4年 |
鋳造クラウン | 8.2年 | 6.2年 | 8.9年 | 7.1年 |
ブリッジ | 10.1年 | 6.2年 | 7.5年 | 8.0年 |
ジャケット冠 | 6.4年 | 5.0年 | 4.0年 | 5.9年 |
私たちは毎日食事を摂ります。寒い日はお鍋が美味しいし、暑い日はアイスクリームが食べたくなります。そんな温度の変化、咬むという刺激を歯は毎日受けています。建造物もかならずつなぎ目から隙間が空いてきます。歯の修復物も同様です。そのつなぎ目から崩壊していきます。小さなお子様の時からむし歯になってしまったら、将来的な再治療のリスクから逃れることは難しくなります。
皮膚の表面には100個/?の細菌がいると言われています。一方、唾液1ml中には1億個の細菌がいることが判っています。崩壊した部分から細菌感染が生じることでさらに複雑になっていくのです。歯科治療の最前線は細菌との戦いであることがわかります。 時々治療していてびっくりすることがあります。まだ被せてあった冠がとれていないのに、中の歯はずいぶんと腐っていることがあるからです。もう少し遅かったらその歯を助けることは出来なかったでしょう。
こんなにひどい歯周病になる前にケアできていたら、もっと良い状態で維持させることが出来たかもしれないのに・・・と悔しい思いをすることもあります。
ご家族のために、社会のために時間を惜しんで一生懸命働いてきた方たちが、きちんとした口腔ケアを受けていらっしゃらなかった為に、入れ歯になり食べることにも不自由されるようになることが、残念でなりません。
アメリカと日本の歯科医院に通院している患者さんの意識調査の結果があります。
なぜ、歯科医院に通うのかの意識の違いがはっきりしています。
【日本の場合】
1位:歯が痛いので
2位:かぶせ物がとれた
3位:歯肉の腫れ
4位:歯のクリーニング
【アメリカの場合】
1位:歯のクリーニング(メンテナンスの為)
2位:むし歯の処置の為
アメリカでは年間所得が200万円以下の人達も約50%は定期的にメンテナンスのために歯科医院に通っているというデーターがあります。日本ではメンテナンスを受けている人達は、約2~3%であると言われています。
なぜ日本では歯科メンテナンスが定着しなかったのでしょう?
歯石を除去する際の治療費の国際比較を表したものです。日本は他の先進国に比べて10~20分の一の値段で治療費が抑えられていることがわかります。私たちは安価な治療を繰り返してきたということになります。治療を繰り返しているうちに歯を無くしてしまっているのです。今、日本の財政は非常に厳しくなってきています。日本の医療費は先進国中最低レベルですが、ますます切りつめられてくるでしょう。その時、歯科の医療費はどこまで認められるのでしょうか?もし、胃ガンの手術の医療費を保健負担にするのと、歯科の医療費を保健負担にするのとどちらかを選べと言われたら、皆様はどちらを選ばれるのでしょう・・・?
私どもにできること
やぎはしファミリー歯科の診療数値目標は、上記のデーターより出てきたものです。小さなお子様は1本もむし歯を作らず、正しい機能の獲得を目指すこと。残念ながら治療が必要になりいらっしゃった方々には、「治療の終わり」は「メンテナンスの始まり」であることをお伝えすること。皆様の健康をお守りするお手伝いが出来ることを心から願っています。
一本でも多くの歯を残すことで、確かに健康を維持することに繋がることが、様々な研究より明らかになっています。一本の歯を失うことは、その神経が支配していた脳の領域の機能を失うことです。人間が胎児としてお母さんのお腹の中に宿っているときに、一番最初に出来る臓器が口腔です。お口は命の始まりでることを私たちは忘れがちです。 最近では、お年を重ねている方は様々なお薬を服用していらっしゃいます。お薬の種類によっては感染により顎の骨の壊死を起こすものもあります。定期的なメンテナンスが欠かせないと言われています。
忙しく過ぎていく毎日の中で、ほんの少しの時間をお口の中のケアに割いてくださることを心からお願い致します。
ライフステージを考えた予防プログラム
さらに進んだ予防歯科を目指して私共は進化を続けます
予防歯科は「むし歯にしないこと」を連想するでしょう。では、もし、むし歯が出来てしまったら、また、多くの歯をすでに失ってしまったら、予防はもう出来ないのでしょうか?
予防には3つの段階があると考えます。それぞれの段階に私共歯科医療従事者が行うべきプロケアと患者様がご自身で行うセルフケアが関わっていきます。
第一次予防 | 健康の増進やむし歯歯周病などの病気の予防の段階です。 | 定期的なメンテナンスやシーラント、予防矯正など |
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第二次予防 | 同じような状態にみえても、それに到った個々人の環境、原因は違います。診断は最も重要と考えます。また、それに従って、出来るだけ最小限の侵襲と介入を行い、処置を完了します。さらに再発の防止を行います。 | ・適切な診断 ・最小限の介入(MI) ・障害の進行抑制と再発の防止 |
第三次予防 | さらに大きく欠損に到った場合、最小限の介入ではさらに将来的に機能を損ねていく可能性がある場合があります。可能な時期に適切な処置を行い機能回復を目指し、健康を維持することが必要と考えます。 | ・機能回復 ・歯周外科 ・インプラント・義歯などの欠損補綴 |
予防歯科は「むし歯にしないこと」を連想するでしょう。では、もし、むし歯が出来てしまったら、また、多くの歯をすでに失ってしまったら、予防はもう出来ないのでしょうか?
予防には3つの段階があると考えます。それぞれの段階に私共歯科医療従事者が行うべきプロケアと患者様がご自身で行うセルフケアが関わっていきます。
予防の第一段階が健康な歯や歯周組織への病原菌の感染を防止する段階とすれば、第二段階は、なぜ感染を生じてしまったのかを診断し、病変を取り除き、機能を回復させることを目指します。そのために、出来るだけ健康な部分を残し、菌に再度感染しにくい形態を作ることが求められます。お口の中の疾患の進行をくい止めるには、細菌のコントロールと共に力のコントロールも重要になります。私たちは無意識に咀嚼をし、食べ物の味や触感を楽しみます。しかし、歯があり、舌や粘膜が重要な仕事をしている事には考えることもしないでしょう。人が噛みしめるときには自分の体重と同じくらいの力が歯にかかるといわれています。多くの歯牙が欠損した状態では、少数の残された歯牙に大きな力がかかることは否めません。また、骨格系や歯牙の配列の状態によっては噛む力を上手く制御できないケースも見受けられます。
そのために、私共歯科医療従事者は何が出来るでしょうか。歯科医師による可能な限り、再発を防止できる設計、さらに、出来るだけ精密な処置をすることと、歯科衛生士による患者様のキーリスクに合わせたプロケア。そして主体は患者様の自立を促すメンテナンスを私共は目指してい参ります。