目立たない義歯denture
私共の義歯への考え方
現在日本は世界で類を見ない超高齢化社会が進行しています。2025年には人口の約30%が65歳以上の高齢者になると予測されています。認知症の患者数も700万人に増加するといわれています。
お口から食事をするということが、生活の質(QOL)の向上には非常に重要であることがわかってきました。歯科医療の本来の目的は健康寿命を延ばすことである考えます。リハビリテーションという言葉があります。語源はラテン語で、re(再び)+ habilis(適した)、すなわち「再び適した状態になること」「本来あるべき状態への回復」などの意味を持つといわれています。しかし、本来あるべき状態が獲得されていなければ、その機能を獲得することは不可能です。食物を摂取して咀嚼し、飲み込むこと。そんな無意識に当たり前にできていたことが出来なくなったとき、その困難は想像に難くありません。認知症になってしまった方の義歯の作成は非常に難しくなります。以前使っていたもの以外を受け入れる余力がその方には残っていないからです。また、どこが痛いのか伝えることも困難が伴います。
義歯は本来、人工臓器のひとつです。体力的な余力のあるうちに、きちんとした機能を確立させておくこと。食事に関わる診療科としての歯科の役割は本来そこにあるのだと考えています。もし不幸にも訪問診療が必要となっても、それまで問題なく使用できる義歯の有無で対応は全く変わってしまうでしょう。訪問診療でできることは限られているからです。
その方のお口の中にきちんと装着された入れ歯は外すことさえも嫌がられるほどご本人のからだの一部として機能してくれます。ずっと病気がちで歯科の治療に通うこともままならなかった年配のご婦人が来院されました。お口の中は根だけの歯が多数あり、残せる歯は2~3本という状態でした。しかし、しっかりした義歯を入れられたことにより、見違えるほど健康的で明るい表情に変わられました。その方は「この入れ歯はもはや自分の一部です」と笑っておっしゃっていました。生活習慣病の増加とともに、糖尿病の方、また、高血圧などで外科処置のリスクが高い方も増加する傾向にあります。そのような方でも、義歯は無理のない計画が立てられます。問題なく噛めることで全身の状態も改善していく可能性があることを私共は知っています。
部分的に数本の歯を失ってしまって部分義歯を装着しなければならなくなった場合、部分義歯は総義歯に移行する途中の義歯と定義づけられることがあります。保険で作成されるバネが、しばらく使用しているうちにばねがかかる歯を動揺させたり、脱落させたり、折れたりして徐々に欠損部分が広がっていくことが多いからです。そのこと自体、本来のあるべき歯科治療の姿に反していると言わざるを得ません。歯科医療の進歩と共に、予防の概念が定着してきました。しかしそれ以前に多くの歯を失ってしまった方にとって、咬合平面の乱れがあったり、かみ合わせのずれがあったり、最小限の治療では残された歯を守ることができない場合が沢山あります。合わない入れ歯を使用し続けていたことで入れ歯を支える骨もより減少し複雑な口腔内になっていきます。その場合は治療の最終ゴールを患者様と共有し、その時点で必要と思われる最大限の治療をすることで次の疾患の発生のリスクを最小限にとどめていく治療が理想的なのだと考えます。
ドイツ式の入れ歯「テレスコープ」とは?
レスコープ義歯とは、入れ歯先進国ドイツにおいて開発された部分入れ歯のことで、歯に直接被せる内冠、入れ歯の本体、外冠から構成されているものです。ドイツでは130年の歴史の中で改良され、稲葉繁先生が日本に紹介してからも40年の歴史があります。保険の部分入れ歯と違い、金属のバネのない入れ歯のため、入れ歯であることを他人に気づかれることがありません。作製にあたっては、もしも歯を失った場合でも修理のみで長期間にわたりご使用いただけることを前提として設計いたします。一度作ったらメンテナンスをしながら、長く使っていただけることを目標にお作りするものです。
テレスコープ義歯の特徴
- 歯にひっかける金具が見えないため、入れ歯であることが気づかれません
- 夜寝るときも外す必要がないため、ご自分の一部として使っていただけます
- 食事をしているときにはずれてしまうこともありません
- 違和感が少なく、快適な装着感です
- インプラント同様、見た目に美しい入れ歯です
- 残っている歯の喪失を、入れ歯によりできる限り守ります
- 年月の経過とともに口の中の環境が変わってもメンテナンスをしながら、長く使えます